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「5 Rackets,30 minutes !?」&「3つの規格外‼」

その日は朝から雨で、午後になってからもあまり仕事はなく、少し暇な時間を過ごしているときのこと。有明JAPAN OPENのストリングルームに『ジム・クーリエ』がラケット5本を持ってやって来た。
受付で「5Rackets,30分でできるか?」と聞いている。当然、受付は「時間的に無理だ!」と言った。するとクーリエは「マシンが5台あるんだから、30分あればできるだろう」的な言い方で、我々のマシンの方を指差していた。

【Wilson : PRO STAFF85に、Gosen : MICRO SUPER16タイプのシンセティックストリング、72lbs.】
張り方とノットの位置を確認して、5人でいっせいに張り上げた。一般的に、「感覚」「フィーリング」を重視するプレイヤーが多く、『Same Machine』『Same Stringer』がどの大会でも基本である。しかし野球打ちで有名なジム・クーリエには、こういったこだわりはなかったのかもしれない。

「88・12・2.0」という数字を見ても、何のことかサッパリわからないだろう。この数字は同じプレイヤーの数字である。’90年代の話なので、知ってる方は少ないかと思うが、ダブルスで数々のタイトルを取った「ウッディーズ」の1人、『マーク・ウッドフォード』の話になる。
まず彼は、ストリングルームに来るとマシンを覗き込み「このマシンのMaximum Tensionは?」と聞く。「88lbs.」と答えると、「じゃ、そのテンションで!」とリクエストしてくる。そして出してきたラケットは、なんと Main縦糸が12本・Cross横糸が15本のスペシャルラケット。しかも持ち込んだストリングは「2.0mm」のポリ。これで鯨でも釣るのかと思わせるほど太い!

このラケットを張るのがこれまた「ひと苦労」だ。なんせ「2.0mm」もあると、ノットを作るのが大変で「力」がかなりいる。複雑なノットは無理でシンプルに止めるしかない。さらに大変なのがクロスを張るときである。普通は「クロスを通す」といった言い方をするが、「クロスを一本一本編み上げる!」という感じで、何か他の作業をしているかのような感じであった。

ちなみに平均的なテンションは、40lbs〜60lbsくらい。ラケットのストリング・パターンは、Main16/Cross19が多く、Main18/Cross20のパターンのラケットを使用している選手も。また、ストリングのゲージは1.20mm〜1.35mmが一般的である。

筆者
羽賀 慶比古(ストリングショップ グランドスラム)
店舗情報東京都新宿区高田馬場2-9-3 松本ビル1F
03-5272-7018

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