初めてのトーナメントストリンガー
2001年3月、私は初めてツアー大会でストリンガーデビューをした。当時はそれほど意識も高くなく、ツアー大会ではどんなことをしているのか、選手にはどんなサービスをしているのか知りたくて参加したつもりだった。こちらがその程度に思っていても、現場に行ったらそうはいかない。初めて体験する状況とコミュニケーションの取りづらさ、次から次へとくるラケットのおかげで、来て3日で「泣き」が入った。
そんな中でもスタッフは快く受け入れてくれた。いろいろ気を遣う場面が多いと思っていたが、逆に気を遣ってもらった。ランチのタイミング、コーヒータイムとか。こちらは邪魔にならないようにしたつもりだったが、楽しく過ごせた。
最初は、1日10本くらい、それも徐々に増えていく。自分のマシンの前に空の箱が2個並べて置かれるのだが、気づいたときには、その2つの箱いっぱいになっていた。
「今夜は帰れないなー」なんて冗談を言う仲間もいたが、半分本当だった。大会初日前夜はこんな感じだよ、とピザを頬張りながら教えてくれた。これが大会前夜、恒例の PIZZAパーティー。
そのときよく張ったラケットは、HEADのプレステージで、ストリングはナチュラルガットやポリが多かった。選手たちが使っているものは一般に使われているものとほぼ一緒。とくに違いがないことがわかった。ラケットも市販品をカスタマイズしたものが多く、あまり特別感は感じなかった。
しかしテンションはあまり張ったことのない強さが多かった。当時はハイテンション希望の選手も多く、なかには張っているそばから切れることもあった。某選手は試合前にラケットを取りに来てそのままコートに向かう途中、ラケットバッグの中で切れたという選手もいた。即張り直してコートに届けて一件落着したことも。
10日間ほどいたが、何本張ったかまでは覚えていない。とにかく1本1本夢中で張ったことは覚えている。なかでも「プレステージにポリ」の組み合わせは多く、キルシュバウムの黄色いポリは、引っ張るときに「ギーギー」と音がするので、隣にいた友人から「お前はそればかり張ってるなー」と笑われた。
そしてその次の日から私のニックネームは『S P I K Y(スパイキー)』になった。
*【SPIKY】は、キルシュバウムの黄色いポリエステル系ストリング
筆者 細谷 理(ON COURT (RACQUET) !) 店舗情報神奈川県茅ケ崎市幸町3-5 アルス茅ヶ崎 0467-88-3410 |