全豪オープンに5度の参戦……睡眠時間が長くなる
グランドスラムの思い出は苦くも、成長の歓び!
「これがグランドスラムかー」
と見るものすべてが新鮮だったことを覚えています。
2016年の全豪オープンでストリンガーとして初めてグランドスラムを経験しました。
ただ思い返してみると苦い思い出のほうがはるかに多い。
当時は担当した選手のリールは各自で保管していました。
選手がリールを引き上げるときに「この選手のリールちょうだい」とフロントから皆に伝えられます。
ちなみに、日本では「リール」のことを「ロール」と言ったりしますが、そう言うのは世界で日本人だけ。日本以外では、まったく通じません。
基本的に英語が苦手なのでコミュニケーションを取るのにひと苦労しているところに、何と言っているのか聞き取れない選手の名前。
誰が持ってるんだ? とざわついているときは、だいたい私が持っていました。
恥ずかしい思い出ですが、英語以前に選手の把握ができていませんでした。
「どのお客様のラケットを張っているか」は、お店では1年めのスタッフでも気にする超基本的なことですが、
初めて見る英語の選手の名前をどうにも覚えられませんでした。
グランドスラムでは予選を含めるとシングルスだけで男女各200名以上、中盤にはジュニアや車いすの選手もどんどん入ってきます。
今でも把握しきれませんが、当時は本戦選手の名前でさえも、初めて見る選手が大部分でした。
多くの選手はラケットを持ち込むルーティンのようなものがあり、だいたい同じような時間に持ってきて、同じような時間に仕上がりのリクエストをします。
担当している選手が「明日の試合があるのかないのか?」、「あるとしたら何時なのか?」、「昨日は5本だったから明日のこの時間くらいにも5本くるだろう」とか、「この選手はオンコートがありそうだからマシンを空けておこう」とか、「あの選手が来てないってことは明日かな?」とか。
こうして選手の張りに出すタイミングを予測しながら、手持ちのラケットを仕上げたり、翌日に回したりして、自分の時間をコントロールします。
私たちの仕事は、選手より早く会場へ行き、試合が終わったら帰るので、どうしても長時間拘束されます。
そこを上手にコントロールする経験豊富な海外のストリンガー、これに気が付き実践するのにだいぶ時間がかかりましたが、今年で5回め……私の睡眠時間も年々増えてきている気がします。
筆者 川端 隆史(ラケットショップ タジマヤ) 店舗情報 群馬県伊勢崎市本町12-10 0270-25-1820 |