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グリップテープ秘話三部作 〜その3 すすり泣くグリップ

グリップ力が低下したテープは、パフォーマンスを低下させる

先に「いつまでも巻き替えないユーザーがいる」ことに触れましたが、
グリップテープの最大のメリットは「交換できる」というところなのに、
「私は汚いグリップを握り続けています!」と宣伝しているかのようなグリップを、
誰しも見たことがあるでしょう。

巻き替えてもらえないグリップテープのすすり泣きが聞こえてくるようです。
可哀想なのは、なんといっても「白いヤツ」。
純白の雪は、たとえ汚れても、いずれ融けて流れてしまいますが、
白いグリップテープは際限なく汚れてゆきます。

視覚的に汚いだけでなく、
グリップテープに吸い込まれた汗には、
いろんな成分が含まれていますから、
そのままにしておくとバクテリアが繁殖して、
物質的な汚れも進行します。
「乾けば問題ない」わけではありませんね。
汗でぐしょぐしょになったシャツを
「乾けば問題ない」といって、また着ますか? 洗うでしょ?

でも、グリップテープは「洗えません」……。
交換するしかないのです。
テニスラケットを新調してストリングを張れば、割り引きがあっても、およそ3万円が消えます。
グリップテープ1本の価格は、「300〜400円」程度。
ラケットの、わずか「1/100」です。

また、テニスボール1個も、だいたいこのくらいの価格で購入できます。
みなさんそれぞれにボールの使い切り方は違うと思いますが、
エアが抜けてペコペコになり、黄色いメルトンが剥げて、黒ずむまで使いますか?

ボールもグリップテープも消耗品です。
プロの試合では、ボールは「9ゲームごとに交換」、
ほぼすべての選手が試合前に全ラケットのグリップテープを新品に巻き替えています。
彼らにとって「消耗→交換」は当たり前のこと。
ベストパフォーマンスを発揮するために、グリップテープは新しくなければダメなのです。
スウィングパワーを手のひらからグリップ→フレーム→ストリング面へロスなく伝えるためには、
わずかなグリップの滑りがパワーロスを招くからです。

そうならないための「グリップテープ」です。
なのに、テープがペタペタに潰れて手のひらとの密着性が完全に消え去り、
しまいには擦り切れて穴が開いてしまっているグリップテープには、もう機能的な役割など微塵もありません。
むしろ邪魔をします……。

ドライタイプのグリップテープは、表面のサラサラ感がなくなったら交換しましょう。
ウェットタイプは、表面のツヤツヤ感がなくなったら交換の第1目安。
本当は、その時点でウェットタイプの性能寿命は尽きています。
それでも使い続けるなら、黒ずみの進行度合いが第2の目安です。

誰もがこの1年で「除菌」という認識を強くしたことでしょう。
きれいな手にはバクテリアだらけのグリップではなく、清潔な真新しいグリップテープが相応しい。
グリップテープは、あなたの生活意識のバロメーターです。

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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