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グリップテープ秘話三部作 〜その2 白ウェット時代

 

キレイなものは、汚れると目立ってしまうという悲劇

ウェットタイプ登場時は「黒」「青紫」が主流でしたが、ついに「白」いテープが発売されてしまいます。
これが「グリップテープの混沌」を招きました。
巻きたてはものすごくフレッシュ感があって美しい。

「白はしっとり感が強い」という噂も流れ、有名トッププロもこぞって白を愛用。
日本では松岡修造選手のグリップが超目立ちましたね。
現在ではロジャー・フェデラーに憧れて純白テープを巻く若者が多いのですが、
フェデラーのように「つねに新品純白」を保ち続けることができるわけではありません。

「カッコいい!」の好印象は残酷にも短く、あっという間に「なんか汚ぁ〜い」へ変貌。
街中を歩いていると「うわっ! もしかしてアレって……元は白だった???」というグリップを見かけますよね。
「あの人は、またあれを握るのかぁ……」と考えると、いろんなものが汚くても平気な人なんじゃないの?
って勘ぐりたくなっちゃいます。

あっ、「その1」のトップに掲げた「なぜオーバーグリップという呼び方が生まれたか?」
について話していませんでしたね。……「時を戻そう」……。

1980年代後半、天然レザーグリップのコスト削減のため、
各ラケットメーカーが一気に「シンセティックグリップ」へと換装し、
本物のグリップレザーは競技系ハイエンドに残されたくらいで、みんなシンセティックになっちゃいます。
当初はフワフワした握り感に「気持ち悪い」「感覚がボヤける」と批判も多かったのですが、
そんな批判なんかどこ吹く風のラケットメーカーは、いまさらコストの高い本物天然レザーへ戻したりしません。

「天然レザーグリップ」に取って代わった「シンセティックグリップ」は、
そのクッション性ゆえに「ヘタリます」。
そこで各メーカーは交換用として「リプレイスメント(巻き換え用)グリップ」を発売。
グリップ性能が低下し、クッション性が低下すれば、交換しなければならないということで、
交換用は「必要だったはず」なのですが……。

しかし、メーカーにとって想定外のことが起こります。
なぜかユーザーたちは
「十分にクッション性とグリップ力があるシンセティックグリップの「そのまた上に」グリップテープ」を
巻き始めたのです。

シンセティックグリップは表面がウレタンでコーティングされ、グリップテープを巻かずに、
そのままで十分なグリップ性能があったのに、みんな巻いちゃったんです。
同じ性能を二重にカブせるっていう……。

「なぜグリップテープを巻くのか?」
「そこにグリップがあるから」
……禅問答のようです。
そしてこれが、「グリップテープ → オーバーグリップ」のきっかけとなります。

「リプレイスメントグリップ」は「交換できる」という意味で名付けられましたが、
グリップテープもまた交換するものというところが、混同しちゃうね……という配慮で、
「グリップテープ → オーバーグリップ」と呼び替えるメーカーが生まれたのですが……
ここでは昔からの呼び名である『グリップテープ』を使います。

あっ、それからついでに生まれちゃったのが
「巻き換え用じゃなくて、元から巻いてあるグリップ」という意味の『元グリ』ですね。

さて、続いてクライマックスの第3部を明日公開です。
お楽しみに!

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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