ボールを弾き返す「3つの力」ってナニ?
テニスとは、ラケットでボールを打ち返し合うゲームですが、
みなさんはラケットの本質を知っていますか?
多くの方が、カーボンでできているあの枠のことを「ラケット」と思ってらっしゃいますが、
それだけではラケットは完成していません。
「ラケットフレーム」+「ストリング」
ラケットは「ラケットフレーム」と「ストリング」という
2つの要素が組み合わされて完成します。
考えてみれば、ボールが接触するのは「ストリング」だけであって、
フレームはいっさい接触しないのです。
ボールがストリングに当たる瞬間のことを「インパクト」と呼びます。
※今回はボールがストリングに当たる瞬間から離れるまでの現象をインパクトとします。
インパクトは「3つの要素」によって構成されます。
それは「スウィングの力」、「ボールの弾力」、そして「ストリングの伸縮」です。
まず「スウィングの力」ですが、これはあなたがラケットをボールに向かって振り出し、
ストリング面をボールにぶつける力のことです。
この力は、たとえば「鉄球 vs 鉄棒」のように、
どんなに硬いもの同士でも弾き返すことができる能動的な力です。
次に「ボールの弾力」ですが、テニスボール自体に弾力がありますから、
ボールを鉄板に叩き付けても、ボールは反発して跳ね返ってきます。
一般的な「プレッシャーライズドボール」は、コアボール自体のゴムの弾力性と、
内部に封入されたガス圧の力が、反発の要素です。
そして、ラケットフレームに張られている糸です。
ストリングの1本1本それぞれが「伸縮」し、それが網状に編まれているのがストリング面で、
この「ストリングの伸縮」が、反発力を発生させます。
たとえば、張ったばかりのストリング面に鉄球を落すと、接触した瞬間にストリングが「伸び」て、
次の瞬間、ストリングは元の長さに戻ろうと「縮み」ます。
この戻ろうとする力が鉄球を上へ押し上げるのです。
そうです、トランポリンを思い浮かべてください。
いま、ボールとストリングそれぞれが衝突する相手を「鉄板」「鉄球」という硬いもので表現しましたが、
テニスでのインパクトは、互いに弾力を持ったもの同士(ボールとストリング)の衝突ですから、
弾力は倍加(2倍という意味ではない)されますね。だからテニスは楽しいのです!
さて、この「スウィングの力」+「ボールの弾力」+「ストリングの伸縮」が、
テニスにおけるインパクトのパワーメカニズムですが、いつまでも同じ状態が続くわけではありません。
その真実を知ると、あなたはすぐに「ストリングを張り替えよう!」と思うはずです。
その真実とは……次回に続く。
[画像提供:株式会社グローブライド、株式会社ダンロップスポーツマーケティング]
筆者 松尾高司(KAI project) 1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。 おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。 「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。 |